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おはようこんにちはこんばんは!本のこと、アートなこと、旅のこと、サイエンスなことなどがエントロピー増大気味に散らばっている部屋へようこそ。


by Chubb-3
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ジャン・コクトー展

日曜日は神戸へ。
ひとつには、井村君江先生のご講演をお聞きするため、それと大丸神戸で月曜日まで(~9/26)だった『ジャン・コクトー展』に行くため。

ジャン・コクトー展_c0024552_1151081.jpg最近、大丸ミュージアム梅田でレオノールフィニ、そして今(~10/2)デ・キリコと、パリのベル・エポックの芸術家の作品展が多いような気がします。
このジャン・コクトーは、そのベル・エポックからレ・ザネ・フォル(狂乱の時代)への移行期に活躍した「万能の人」。

堀口大學の名訳で知られる詩、「耳」。
わたしの耳は貝の殻
海の響きをなつかしむ
萩尾望都の漫画化でも知られる小説、『恐るべき子供たち』。
スケッチも、装幀もこなし、自らのデザインで劇場や教会もつくりあげ、映画までつくってしまう、本当に恐るべき精力家。
あらゆることを手がける点では、レオノール・フィニにも似ているとおもいますが、ジャン・コクトーのほうが、より知名度が高く、より成功しているといえるでしょう。

写真は今回の展覧会のカタログ。262ページ、2cmの分厚さで2,000円!
コレクションもよく、解説も充実していて、本当にお買い得!

☆ bloc:希望的観測。【ジャン・コクトー展】
(この後、岩手のほうへ巡回するそうです。)



今回のジャン・コクトー展はアメリカのサヴァリン・ワンダーマン・コレクションから。
このサバリン・ワンダーマン氏はコルム社のCEOで、氏のコレクションはプライベートとしては世界で最も多くの点数を誇るそうです。
実際に、日本を巡回したこの展覧会に出品された点数もかなりのもので、所狭しと並べられていました。
日本初公開のものも多いということです。

最も多かったのは、スケッチやデッサンでした。
ジャン・コクトー特有の思い切った太い描線が素晴らしい。
数多くの人物画のなかで一際目立つのが自画像です。
面長で神経質そうな顔立ちがわたしには芥川龍之介のような鋭さに見えました。
『鳥刺しジャン』シリーズでは、こちらを向く自画像の放射状にのびる視線にとらえられ、周りを見渡すと、あらゆる人物画に描かれた大きな眼がこちらを向いているかのような錯覚にとらわれました。
もしかすると、とりかこむ視線は、ジャン・コクトー自身に向けられたものなのかもしれません。
これほどまでに、自分の内面を描く、あるいは自分に対する視線を意識するのは、尋常でないエネルギーが必要とされます。
ジャン・コクトーが第一線でさまざまな表現をおこない続けたのはこんな彼ならではのエネルギッシュさによるものといえるとおもいます。

コクトーの小説を日本に熱心に紹介し、日本語に翻訳した堀口大學は、コクトーが戦前に来日した折に通訳兼案内役をつとめました。
そのような交流関係から堀口大學の蔵書のなかにはコクトーの贈呈本も数多くあり、その中でも表紙や扉にデッサンをほどこしたものが残されていました。
今回の展覧会ではその中から一部を見ることができました。
『富士山』に「記念」という漢字を書き写したものがあったり、『日本への挨拶』は東京の帝国ホテルの便箋を使ってあったり・・・
とても貴重な資料でもあり、またそのデッサンがいい雰囲気で、「う・・・欲しい」と思いながら覗き込んでいました。

コクトーは若い時分から自著の挿画や装幀を手がけていましたが、その他にも油彩、パステル画、コラージュ、壁画、宝飾品などのヴィジュアル・デザインを手がけていくようになりました。
さらに、映像作家、脚本家、映画監督としても知られていくようになります。
この映画を撮る点でのさまざまな思いをジャン・コクトー自ら語る、ドキュメンタリーが上映されていました。
この中でクローズアップを多用し、視線の交差で人物たちの思いを語る手法について熱心に話していたところがあったのですが、それを観ながら、ジャン・コクトーが仲間たちとスナップ写真を撮ったものの並びを思い浮かべていました。
ピカソがいて、ヴァシリエフ、モディリアーニ、キスリングが集まってくる・・・
そんな仲間がジャン・コクトーの映画にも登場するなんて!
それこそ「友情出演」ですよね!

最後に、コクトーの両手の型取りがありました。
ほっそりと長い指、大きな掌。
多岐にわたる創作活動をしっかりと包み込む手のようにわたしにはみえました。
by Chubb-3 | 2005-09-27 00:47 | 芸術の周辺*art