おはようこんにちはこんばんは!本のこと、アートなこと、旅のこと、サイエンスなことなどがエントロピー増大気味に散らばっている部屋へようこそ。


by Chubb-3
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

ブルーノ・タウトの工芸、デザイン展

c0024552_23271384.jpgヘリコプターが京都御所の周辺をうなりをたてながら旋回していた日、早めに用事を済ませたわたしは京都の鴨川の東側をてくてく歩いていました。
京阪・出町柳駅から川端通を下ったところの京都ドイツ文化センターで開かれている「ブルーノ・タウトの工芸、デザイン展」を観に行くためです。
真っ黒のヘリが鴨川上空を一台、二台、三台・・・と飛んでいて、装甲車まで出て物々しい雰囲気。
そして、そんなこととは全くお構いもなく、また、本当にここで展覧会が行われているのだろうか?というような様子のゲーテ・インスティテュート京都。

c0024552_23305443.jpg中へ入って、受付の女性に「えっと、タウトのはココなんですか?」と思わず聞いてしまいました。
ドイツ人の講師っぽい方たちと話していた彼女は、さらっと「えぇ、あちらです」。
日本風の坪庭や図書館を見ながら、ぐるっと建物の南側へまわると、やっとポスターが見えました。なんという奥ゆかしさ。
すこし広め一部屋といった感じの展示スペースには、民藝をおもわせる工芸品がていねいにおかれていました。

☆ bloc:希望的観測。【ブルーノ・タウトの工芸、デザイン展】
11/14(月)~11/19(土)10:00-17:00 つまり今日の午後5時まで。
・11/19(土) 13:30~ 講演会あり。
参加無料で予約も不要になったそうです。




壁にかかった額からみていると、夫人と訪れたタウトの助手をつとめていた剣持勇氏の若々しい姿が、ともに写真におさまっていて、少し驚きました。
剣持勇氏は、キッコーマンの卓上醤油さしなどのグッドデザイン・プロダクトを生み出したことで知られている方です。
その剣持氏が、懸命に仁王像を写そうとしているタウト氏のために、ライトを危うい体勢で山門につかまっているところを、コミカルに描いているスケッチがあり、二人の仲のよさがうかがい知れます。

それら写真やスケッチ以外に多く展示されていたのは、タウト氏がデザインした椅子や日常の道具たち(ていねいに復刻されたものも)。見始めると、タウト氏の名著『日本美の再発見』の内容が思い出されてきました。

ブルーノ・タウト氏は、1880年ドイツで生まれ、アール・ヌーヴォーやジャポニズムに影響された建築家です。ドイツでのナチス台頭に危険を感じた彼は、日本インターナショナル建築会の招待を機に、夫人とともに1933年来日し、1936年トルコの招聘をうけ離日し、1938年トルコの自宅で58年の生涯を閉じました。
『日本美の再発見』に記されている通り、敦賀到着の翌日であった誕生日に、京都は桂離宮を訪れ、日本の伝統建築の美しさに圧倒されたようです。

今回、この「ブルーノ・タウトの工芸、デザイン展」が巡回したのは、仙台の東北工業大学(7/1~7/6)、高崎の少林山達磨寺(8/1~8/7)、熱海の起雲閣(9/23~9/25)そして京都ドイツ文化センター(11/14~11/19)の4ヶ所。
これらはみな、タウト氏の日本でのゆかりの地です。
仙台には、タウト氏が在籍した工藝指導所があり、高崎の少林山達磨寺は、3年間の在日期間中の拠点でしたし、熱海には、旧日向別邸「熱海の家」があり、京都は感銘をうけた桂離宮があります。

展示されている中でも目をうばわれたのは、竹製の骨に和紙を張ったシェードつきの卓上ランプ、そして「ガラスの建築積木」。
さいきん和紙のあたたかさをうたった照明器具はたくさんあるのですが、この卓上ランプのシンプルな美しさと品のよさにはとてもかなわないと思いました。
また、「ガラスの建築積み木」は復刻だったのですが、中の気泡や、表面のなめらかな凹凸も再現されていて、ステンドグラスに使われていそうな濃い色のガラスの微妙の陰影がとても印象的でした。
そして、仙台の工藝指導所で指導したという、椅子「椅子の規範原型の研究成果品タイプC」。その機能的な飾り気のなさの中にある美しさ。このデザインの精神が、ここの若い研究所員だった剣持勇氏らに受け継がれていった、ということで、剣持勇氏デザインの椅子もあわせて展示されていました。

たった3年間の滞在であった、世界的に有名な建築家のブルーノ・タウト氏の日本のデザイン界に対する影響を、ほんの少しの展示で端的にあらわしている、いい展覧会でした。
外の上空の喧騒とはかけ離れた境地にある、というのも、また不思議なかんじで・・・
[PR]
by Chubb-3 | 2005-11-18 23:28 | 芸術の周辺*art